月曜日, 3月 03, 2008

ITシステムの導入で失われる知力について

前回のエントリでマインドマップまで書いて挫折してしまっていますが、ITシステムの導入で失われる知力に関する文章です。
ITシステムの導入は、その価値や生み出すものばかりに目がいってしまいがちですが、逆に失われるものもある、ということをよく考える必要があります。

■Google前後の世界
梅田望夫さんの有名な著書「Web進化論」を引くまでもないですが、Googleの出現によってわたしたちの知識に関する考え方は一変してしまいました。現在のわたしたちは、わからない事があれば考える前に検索するのです。結果として知識習得のためのコストが大きく下がった事はとても良いですが、逆に書籍などを読み、自分で考えるという力は低下しているような気がしています(これは個人的な主観です)。

■ITシステムとナレッジのトレードオフ
ITシステムを導入すれば、基本的には利用者はそのシステムによって処理能力を引き上げられ、今まで人間ではできなかったほど高度な分析や処理ができるようになります。システムにチェックロジックなどを組み込むことにより作業は平準化され、ミスが防止されるようになります。しかし、こういったメリットを享受した場合、同時に失っているものもあるのではないでしょうか?

  • 遂行能力の引き上げ vs 能力そのものの低下
    今までは、行うべきこと(たとえば、見積り書の作成)のために、たくさんの物事(考え方やルール)を知る必要がありました。しかし、システム化してしまうことにより、そういった知識が無くてもそれなりの処理ができるようになります。結果として、利用者の能力そのものは下がってしまう事があります。
  • 処理の平準化 vs 工夫力の低下
    システムを導入すれば、たくさんの仕事をシステムを活用して(何も考えずに!)処理できるようになったりします。また、処理は定型化/汎用化されているので、システムが示すとおりに入力すればすむようになったりします。今までは「能力の高い人は精度高く、能力の低い人は精度低く」だったのが平準化されます。しかし、これは、能力の高い人についても平均的な作業レベルまでしかさせない、という事にもなります。結果として、個々人が工夫をしたりする力が減ることがあります。
  • 処理の高度化 vs ブラックボックス化
    今までは想像もできないような非常に複雑な処理も、システム化することによってできるようになります。しかし、逆に業務の一部がブラックボックス化してしまい、誰にも理解できないという事になりがちです。ちなみに構築当初は精通していた人がいても、その後担当者が異動してしまいシステムが変更できないというのも、よくはる話です。
  • 処理スピードアップ vs コミュニケーションの減少
    システム導入により、今までは人間系でおこなっていた作業がスムーズに、スピードアップしてできるようになります。しかし、当然のことながら、コミュニケーション量も減っていきます。いままではコミュニケーションによって防止されていた作業の落とし穴が露呈したり、全体的な利用者のモチベーションが下がるということも発生する可能性があります。
■失うものは何かを意識し、議論する
得てしてITシステムの導入は、その正の価値ばかりばピックアップされます。なんといっても人は新しいものに期待をしてしまいがちです。しかしITシステムは企業やビジネスのインフラでもあります。上記のような観点で、負の影響についても(前向きに)意識し、議論をすることによって、防止したり縮小することができるのではないでしょうか?


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