月曜日, 3月 10, 2008

システム開発上流工程における権威勾配

■権威勾配について

権威勾配とは、正確には「操縦室内権威勾配(Trans-cockpit Authority Gradient)」のことで、航空業界におけるクルーリソースマネジメント(CRM)に出てくる概念です。

CRMとは航空機パイロット(クルー)向けの学習プログラムで、『利用可能なすべてのリソースを、最適な方法で最も有効に活用することにより、クルーの トータルパフォーマンスを高め、より安全で効率的な運航を実現することを目的とする考えかた』という定義です。ITプロジェクトにおいても、チームのトー タルパフォーマンスを高める事は大きな課題なので、いろいろと参考になりそうなアイデアが詰まっているようです。詳細は下記の本などを参照ください。

機長のマネジメント―コックピットの安全哲学「クルー・リソース・マネジメント」

で、権威勾配は何かと言うと、(飛行機が)安全な運行を確保するための操縦室内での権威の力関係のことになります。

  • キャプテン(機長)、コーパイ(副操縦士)及びフライトエンジニア(航空機関士)間の勾配は大きくても小さくてもいけない。
  • 適当な勾配を保てば、クルー間の自由なコミュニケーションが保たれ、航空機の運航もモニターも改善される。
  • 勾配が急すぎると、コミュニケーションは減り、相互チェックが減じる。
  • 勾配が浅すぎると、キャプテン(機長)が権利を行使できなくなる。
■システム開発上流工程における権威勾配

システム開発の上流工程(要求開発とか、要件定義など)においても、この権威勾配が重要なファクターではないだろうかと、最近考えています。主要な登場人物としての「ビジネスオーナー」「ユーザー(業務担当者)」「エンジニア(開発担当者)」の権威勾配が適切でない状態でシステムを開発すると、「使えないシステム」や「ビジネスに効かないシステム」が出来上がってしまうのではないか。

私も参加している要求開発のコミュニティでは、コタツモデルというメタファーを使って「ビジネスオーナー」「ユーザー(業務担当者)」「エンジニア(開発担当者)」の適切な関係を定義していますが、これをいかにして形成していくのか、について権威勾配の概念がピタっとはまるのではないか?



過去のシステム開発プロジェクトは、既存業務の自動化や情報化であり、比較的にシステム開発の着地点も見えやすかったのですが、これからのシステム開発は、より人間系を含め(技術的ではなく業務的に)複雑化していくと思います。

その中で成功確率を高めるためには、適切な権威勾配をステークホルダー間で構築し、コミュニケーションと相互チェックを実現していくべき、というのが私の意見です。

※蛇足
ちなみに、次回の要求開発アライアンス定例勉強会で「コタツモデル再考」というタイトルでお話させていただくことになりました。発表資料は本Blog等にもあとで掲載しますので、興味のある方はよろしくどうぞ。

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